| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-122  (Poster presentation)

冷温帯二次林林床へのバイオチャー散布は林床土壌とコナラ実生に影響を与えるか
Effect on application of biochar on soils and seedlings of Quercus serrata in a cool temperate secondary forest

*小林哲(玉川大・院・農), 友常満利(早稲田大・教育総合), 森直哉(玉川大・学術研究所), 小山悠太(早稲田大・院・先進), 加藤夕貴(早稲田大・院・先進), 関川清広(玉川大・環境農)
*Satoshi KOBAYASHI(Grad. Sch., Tamagawa Univ.), Mitsutoshi Tomotsune(Waseda Univ.), Naoya Mori(Lab., Tamagawa Univ.), Yuta Koyama(Grad. Sch., Waseda Univ.), Yuki Kato(Grad. Sch., Waseda Univ.), Seiko Sekikawa(Tamagawa Univ.)

 バイオチャー(バイオ炭)は,土壌の栄養塩および水分を改善することが知られている.コナラ二次林の維持には実生更新の重要性が増しつつあるが,同林分下のコナラ実生は,光不足や虫害によって多くが死亡する.二次林の維持管理上,林床下に生育するコナラ実生の生存と成長に効果的な管理技術の確立は重要な研究課題である.そこで本研究は,林床土壌とコナラ実生に対するバイオチャー散布の影響を明らかにすることを目的とした.長野県軽井沢町にあるコナラ二次林の林床に,バイオチャー処理区として0 t / ha(コントロール区),5 t / haおよび10 t / ha区を設置した.
 10 t区の土壌pH(10 cm深)は,他の処理区より,やや高い値を示した.これは,バイオチャーが土壌中のH⁺を吸着したことに起因すると考えられる.土壌ECには,処理区間差が見られなかった.5 tおよび10 t区の土壌NO₃-N含有量(5 cm深)は,0 t区より高い傾向を示した.これはバイオチャーからのNO₃-Nの溶脱に起因すると考えられる.実生の死亡率は著しく低く,バイオチャー散布の効果は明らかではなかった.実生のバイオマスは,10 t区が最も多かった.実生の根重比は,10 t区において生育期初期に高かった.1年生以上実生のLMAは,5 t区と10 t区において高い傾向を,当年生実生のLMAは10 t区において高い傾向を示した.10 t区における生育初期の高い根重比から,バイオチャーによって土壌水分が低かったことが示唆される.この生育期初期の高い根重比は,それ以降の栄養塩の吸収に寄与し,その結果,LMAとバイオマスを高めたと考えられる.コナラ実生の成長には,10 t / haないし,それ以上のバイオチャー散布が効果的であると結論される.


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