| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-129 (Poster presentation)
植物の成長は、競争と被食の影響を受ける。光を巡る競争下にある植物は、光を得るために地上部に投資し、地下部への投資を減らすと考えられる。また、被食により植物の個体重は減少するが、生育初期に被食を経験した植物は、被食を経験しない植物と同程度にまで成長することもある。一方で、光を巡る競争下にある植物のうち大きな植物が被食などで葉を失うと、被陰されていた小さな植物の光環境は変化し、その結果、小さな植物の成長量が変化する可能性がある。そこで、本研究では、同じ成長段階で同程度の量の葉を失った植物の成長量は、競争下にあるか否かで異なり、競争下にある場合には、競争内の順位によって異なる、という仮説を検討した。
アサガオ(Ipomoea nil)を材料に、競争と葉の切除量、切除時期の3つを要因とする栽培実験を行い、葉の切除に対する競争下の植物の成長を評価した。競争は有無の2水準、葉の切除量は葉の長さの0%、25%、50%の3水準、切除時期は切除なし、播種から2、4週間後の3水準とした。鉢は乱塊法に則って首都大学東京のビニールハウスに設置した。6月に播種し、設定した切除処理を行った。播種から約9週間後に器官ごとに刈り取り、根、茎、葉の乾燥重量を測定した。解析には各重量を応答変数、実験要因を説明変数とするガンマ分布を仮定した一般化線形混合モデルを用いた。
競争により、植物の個体重量と根の重量は減少したが、葉と茎の重量に差はなかった。切除時期が遅い条件で、個体重量と葉の重量が大きかった。一方、交互作用は認められなかった。
競争下では地下部への投資は減少したと考えられる。また、交互作用は認められなかったため、今回の切除では植物の成長に影響するほどの競争の緩和は見られなかったと考えられる。