| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-134 (Poster presentation)
カシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)の穿入を受けたブナ科樹木が枯死するナラ枯れが急速に拡大している。カシナガは繁殖を行うためブナ科樹木に穿入し、その際集合フェロモンを発生させ、他個体を誘引する。誘引されたカシナガは集中して樹木に穿入する集中攻撃を行う。カシナガの穿入を受けても枯死しなかった樹木(以下、穿入生存木)では、カシナガが再度穿入をしても繁殖に失敗しやすいが、僅かながら次世代のカシナガも発生しており、穿入生存木を伐採処理すべきかについては議論の余地がある。また、樹木が枯死率、カシナガの繁殖率は、樹種によって異なることが分かっている。そこで、本研究では、樹種を考慮し、被害発生から数年間の被害を解析するための格子確率モデルを構築し、シミュレーションにより解析を試みた。具体的には、100×100の二次元格子を用意し、その上にカシナガと樹木をランダムに配置し、カシナガが移動穿入プロセスと増殖プロセスを繰り返すことした。カシナガは穿入した際は集合フェロモンを発散し、その影響を受けた他個体が誘引される。増殖プロセスでは、穿入数がある値に達した樹木が枯死し、樹木内にいるカシナガが増殖するとした。カシナガの初期配置面積を変化させ実験を行ったところ、配置面積が大きい時はナラ枯れが急速に全体へ拡大することが分かった。次に、森林内の樹木数を変化させる実験を行ったところ、森林内の樹木数が多くなると枯死の拡大速度が増加するが、10年後の枯死率は樹木数に依存しないことが分かった。最後に、森林内の樹種構成を変化さたことろ、ミズナラが占有する割合が大きいと急速に枯死率が上がり、小さいとカシナガが繁殖しやすくなることが分かった。ゆえにミズナラの占有割合が小さいときは、穿入生存木は伐採処理の対象となり得ると考える。