| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-162 (Poster presentation)
中国原産の外来樹木トウネズミモチは明治初期に日本に導入され,近年その分布拡大が問題になっていることから,在来種との競合が懸念されている種である.本研究では,トウネズミモチと在来樹種の競合と生理・形態特性との関係を解明することを目的とした.トウネズミモチと在来種の種特性を比較することで競合の予測を行うことが可能になれば,今後の在来生態系の保全に役立つと考えられる.
トウネズミモチと在来樹種との競合の有無を明らかにするため,兵庫県の西宮神社社叢において,トウネズミモチと同所的に分布する常緑広葉樹5種(ヤブツバキ,ヤブニッケイ,クロガネモチ,アラカシ,モッコク)を選定し,2003年から2015年までの個体群動態から競合の有無を解析した.また,トウネズミモチと在来樹種の葉の生理・形態特性を比較するため,最大光合成速度(Amax),葉の厚さ,比葉重などの機能形質および光環境を測定し,機能形質を主成分分析により解析した.これらの結果から,トウネズミモチと在来樹種それぞれの生存戦略の違いおよび,トウネズミモチとの競合の可能性について考察した.また,主成分分析の1軸と2軸の値の範囲を各樹種の機能形質の可塑性として捉え,個体群動態と比較して検討した.
主成分分析の結果,トウネズミモチは機能形質の可塑性が高いことが分かった.ヤブツバキは低いAmaxや葉への高い物質投資など,トウネズミモチとは異なる機能形質を示したが,トウネズミモチの特に多い箇所で胸高断面積合計が減少していた.このことから,ヤブツバキはトウネズミモチと競合し,被圧されていると考えられる.一方,ヤブニッケイはトウネズミモチよりもやや可塑性が低いものの,林内では同所的に胸高断面積合計を維持していたことから,トウネズミモチとは共存できると考えられる.他3種についても個体群動態の解析と主成分分析を用いて,可塑性と生存戦略の観点からトウネズミモチとの関係を考察した.