| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-167  (Poster presentation)

バラ目木本植物によるケイ素集積能力の系統を考慮した比較
The comparison considering phylogenetic relationship about accumulation Silicon by Rosales woody plant

*中村直人, 北島薫(京都大学)
*Naoto Nakamura, kaoru kitajima(Kyoto University)

 ケイ素は植物にとってストレスを緩和する有用元素であり、その集積量や利用の方法は種によって大きく異なる。木本種によるケイ素利用は草本種に比べ理解が進んでおらず、葉以外の器官におけるケイ素濃度、またその役割や濃度の系統的な関係は未だ明らかになっていない。ケイ素の役割を深く理解するためには、木本種においてもそれらの解明が必須である。そこで本研究では木本種の葉と茎に注目してケイ素濃度の系統的な解析を目的とした。
 対象種は日本国内に自生するバラ類木本とし、計54種 (7科30属) の葉と枝を採取し葉と外樹皮のケイ素含有量を計測した。またその中でカジノキ (Broussonetia papyrifera) においてのみ枝を木質部、内樹皮、外樹皮に分け、それぞれのケイ素含有量とその経年変化を測定した。ケイ素含有量に関しては乾燥、粉末化に続けて1 % Na2CO3溶液で12時間85℃で抽出し、その後モリブデンブルー法を用いて測定した。またDNA配列に基づいて系統樹を推定し、葉と外樹皮のケイ素濃度に関する系統シグナルの計算と系統独立比較を行った。
 測定の結果、カジノキは木質部と内樹皮にはケイ素をほとんど蓄積しないにもかかわらず、外樹皮にのみ葉と同等の濃度でケイ素を含むこと、そして葉と同じように経年とともにケイ素を蓄積することが判明した。バラ類木本種においては葉のケイ素濃度が非常に強い系統シグナルを示した(K = 0.988)が、外樹皮のケイ素濃度は比較的弱い系統シグナルを示した(K = 0.237)。また、系統独立比較により葉のケイ素濃度と外樹皮のケイ素濃度には正の相関があることが示された。これらの結果は、外樹皮という草本では見られない器官でのケイ素利用の可能性を示すとともに、葉と外樹皮へのケイ素集積は似た自然選択の結果進化してきたが、それらの形質の環境応答が葉よりも外樹皮において早いことを示唆する。


日本生態学会