| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-169 (Poster presentation)
植物の成長や生存は光合成生産に強く依存している。しかし、植物は芽吹いた場所から移動できないので、効果的に資源を受け取れるようにその形態を変化させることで与えられた環境条件に馴化する。とくに林床に生息する植物にとっては、いかに多くの光を受け取るかが光合成生産に関わる。葉面積を大きくすることで受光量は増えるが、葉どうしが重なり葉身の一部が光を受け取れない状況(相互被陰)が生じてしまう。その状況を回避するために葉身の開き具合を小さくする植物がある。アキタブキもその一つで、葉身の開き具合を調節することで相互被陰を回避する。
本研究の目的は、林床内に生息する野生のアキタブキを用いて相互被陰が起こらない状況を人為的に用意した場合にその葉身がどのような形態をとるか、加えて受光量の違いによって個体ごとの形態に変化がみられるかを調べることである。
今回は、他の個体や植物との接触が起こらないよう孤立処理を行った個体と、手を加えない非処理個体の二つを展葉前に用意した。全ての個体の葉身の最高点(と最低点)から葉身の付け根までの斜辺の長さなどを測定して、葉身の開き具合(角度)を算出し比較した。加えて、PPFD(光合成光量子束密度)測定を行い、各個体の受光量を調べた。
その結果、孤立処理個体は非処理個体に比べて、開き具合の値の範囲における日付の経過による変化が小さかった。受光量と開き具合の関係において、孤立処理個体は受光量が少ないほど開き具合を平坦に近づける可能性がみられた。
野生のアキタブキは孤立した状況において効果的に光を受け取る形態をとるまでにかかる日数が少なくなる可能性がある。また、少ない光で効果的に光合成生産を行うためにアキタブキは出来るだけ開き具合を平坦に近づける可能性がある。