| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-170  (Poster presentation)

葉サイズ・生活型の異なる27樹種における葉柄の力学的性質の違い
Differences in mechanical properties of leaf petioles of 27 woody species in relation to leaf size and life form

*高井紀史, 長田典之(名城大学)
*Takai Norihito, Noriyuki Osada(meijo Univ.)

【背景・目的】葉柄は葉の支持機能と通道機能をもつ組織である。葉柄の形態は葉の形質と密に関係しており、葉サイズや生活型の違いによって、適した形態をとっている。支持機能を高めるには太くするか材を硬くする必要がある。この戦略は、木部や厚壁細胞はリグニンからなるため、葉柄の通道機能とも関係があると予想される。本研究では葉柄の維管束構造によって、材質が異なるのではないかという仮説を立て、葉サイズ、常緑落葉性に注目し調査を行った。
【方法】愛知県の豊田市自然観察の森(暖温帯二次林)に自生する樹木22種(常緑樹11種・落葉樹11種)を用いた。葉形態の測定と葉柄切片の観察、葉柄の強度試験を行い、葉面積、乾燥重量、葉柄断面積、維管束断面積、道管直径、ヤング率を測定した。
【結果・考察】葉サイズについて、落葉樹と常緑樹で傾向が異なった。落葉樹でのみ、葉身重量が大きい種ほど葉身重量に対する維管束断面積が小さく、道管直径は大きかった。また、葉サイズが異なっても、葉柄断面中の維管束の割合に有意な差が見られなかった。常緑落葉性については葉柄と葉身のバイオマス分配、葉柄断面積には落葉・常緑間で差がなかった。また、葉柄長、葉柄断面積、道管直径、ヤング率は落葉樹の方が大きかった。
今回の結果から、落葉樹の方が維管束が発達しており、維管束構造は水利用効率を反映していることがわかった。また、落葉樹の方が硬い材で構成されていたことから、通道機能と支持機能に関係がある可能性が示唆された。


日本生態学会