| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-176 (Poster presentation)
気孔の閉鎖は光合成の低下による炭素獲得の低下、地下部バイオマスの増加は新たな炭素消費の増加といったデメリットを引き起こし、樹木の炭素不足による枯死のリスクを上昇させる。しかし、乾燥ストレス下の樹木の成長率・死亡率の変化を炭素利用から直接示した研究はなく、「結局のところ乾燥ストレスに対して樹木はどこまで耐えるのか」という問いに答えることができていない。そこで本研究は、乾燥ストレス下のアベマキの炭素獲得である光合成と炭素消費である呼吸と生長を見ることで、樹木が乾燥に耐える・耐えられないしくみを炭素利用の面から明らかにすることを目的とした。本研究は、山形大学農学部付属苗畑ビニールハウス内で行い、各30個体のアベマキの当年生実生を用いて4段階の乾燥処理をおこなった。日変化の測定はLI6400による個葉の光合成、気孔コンダクタンスの測定とアクリルチャンバーによる個体全体の光合成と呼吸の測定の2種類の方法で行った。サンプリング測定は、樹高・直径、個体の器官ごとの乾重、葉面積、根の表面積、土壌の含水比を測定した。気温が高い8月までは乾燥ストレスの影響を受け、強度乾燥をかけた処理区では生存率・光合成速度の大幅な低下、地上部では樹高生長の抑制、地下部では細根の増加が見受けられた。一方で気温が低下すると光合成の回復が確認された。アベマキは重度の乾燥ストレス下での光合成の大きな低下により、日中の炭素収支がマイナスになる。この際、地上部の生長の抑制や生産する根をより細くし、炭素消費を抑えることにより乾燥ストレスに耐えていることが明らかになった。