| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-184 (Poster presentation)
材密度や形状、力学的特性に基づく樹木の横枝のコスト・ベネフィット
樹木は、広葉樹と針葉樹に大別でき、針葉樹は円錐型の樹形をもち、広葉樹は幅広い樹冠をもつ。このような樹形の違いを理解する上で、横枝の力学バランスを明らかにすることが重要である。横枝の伸長は、隣接個体との光競争の面では有利に働くが、重力によるモーメントを増大させるため、力学的な支持は難しい。一般に広葉樹は針葉樹よりも材が硬い(ヤング率が高い)が、重量も増すため、横枝伸長において、有利なのかどうかはわかっていない。横枝の力学的安定性を考える上で、材密度(硬さ)や、枝の太さや長さなどを総合的に評価する必要がある。本研究では、針葉樹、広葉樹(常緑樹、落葉樹)の材密度やヤング率の違いと横枝伸長のコスト(伸長量あたりのバイオマス)に関連があるのかを明らかにすることを試みた。
京都大学上賀茂試験地に生育する常緑針葉樹3種、常緑広葉樹3種、落葉広葉樹3種を用いて、樹種ごとに材密度とヤング率を算出し、横枝の先端から基部までの、枝の重量、断面二次モーメント(枝の太さに関係する力学的指標)、安全率(枝の力学的安定性の指標)の分布を評価・比較した。
材密度やヤング率は、針葉樹<落葉広葉樹<常緑広葉樹の順で高くなった。種間では、単位長さあたりの枝の太さとヤング率はトレードオフの関係にあった。また、ヤング率が高い種は、細い枝で十分な安全率を達成でき、ヤング率が低い種は、枝を太くすることによって同等の安全率を達成した。ただし、高い材密度をもつ種の方が安全率が高い傾向があった。また横枝の伸長コストは、高い材密度をもつ種のほうが低かった。これらの結果から、広葉樹は針葉樹に比べ枝を細くでき、横枝の伸長コストが低く、力学的にも余裕があると考えられ、形状的に自由度の高い樹冠をもつことができることが示唆された。