| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-186 (Poster presentation)
現在の作物品種は、野生祖先種が栽培化により遺伝的・形態的に変化し、さらに品種改良を受けて生まれた。
ダイズでは、光合成速度が野生祖先種ツルマメに比べて作物ダイズで、また、旧品種に比べて新品種で高いことが報告されている。一般に、野生植物種間では、葉の生産性に関する形質(光合成など) と葉の維持に関する形質(葉の寿命など) の間に、トレードオフ関係が示唆されている。ダイズでも、栽培化と品種改良に伴い、葉の長い寿命と引き換えに生産性の高さを得たかもしれない。しかし、ダイズはツルマメに比べて、光合成速度と窒素濃度(生産性に関する) とLMA (葉の維持に関する) 両方が高く、光合成窒素利用効率が低いことが報告されている。ダイズには、栽培化・品種改良に伴う生産性に関する形質と維持に関する形質の間のトレードオフがないことを示唆する。しかし、トレードオフを明確にするには、葉の寿命を測定し、近縁な品種を用いて、種間・品種間で形質間の相関関係を明らかにする必要がある。
本研究は、ダイズの栽培化と品種改良に伴い、生産性に関する形質と葉の維持に関する形質間のトレードオフがあったかを明らかにする。ツルマメとダイズの近縁な新旧3品種を用いて、生産性と葉の維持に関する10形質を2014-2016年に合計4回調査した。さらに、種間・品種間で形質間の相関関係を調査した。
ダイズはツルマメに比べて、資源利用効率が低く、生産性に関する形質と葉の維持に関する形質の両方の値が高かった。品種間では、新品種は旧品種に比べて、水利用効率が低く、生産性に関する形質の値が高かった。品種間で葉の維持に関する形質の値は変わらなかった。種間・品種内に、資源利用効率との他に形質間で負の相関関係はなかった。従って、栽培化と品種改良に伴い、生産性に関する形質と葉の維持に関する形質の間にトレードオフがないこと、葉の資源利用効率が低くなったことが示された。