| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-187 (Poster presentation)
窒素によって成長と繁殖が律速される植物にとって、老化する葉からの窒素の回収は重要な窒素保持メカニズムである。窒素回収能力は、枯葉の窒素含量(Ns)によって定量化される: Nsが低い=回収能力が高い。窒素可給性が高い環境に生育する植物ほどNsが高いことが知られているが、Nsの種間差を生み出す生化学的メカニズムは不分明である。葉内の窒素の多くはタンパク質に含まれ、これらは分解しやすい代謝タンパク質と分解し難い構造タンパク質に分割される。本研究では「窒素可給性が高い植物ほど、緑葉の構造タンパク質含量が高く、枯葉に多くの窒素が残る」という仮説を検証した。窒素可給性が高い植物と低い植物の代表として、野外に生育するマメ科植物3種と非マメ科植物3種を調査対象とした。Nsは、緑葉の窒素状態と老化中の回収率の両方またはいずれかを反映する。そこで、緑葉と枯葉の両方について、窒素とタンパク質の含有量を調べた。Nsの平均値は非マメ科3種よりもマメ科3種で高かった。いずれのグループでも代謝タンパク質の大部分(マメ科で82%、非マメ科で87%)は分解されたが、構造タンパク質の分解率は低く、マメ科で12%、非マメ科で39%であった。また、仮説と異なり、緑葉のタンパク質組成はグループ間で差が無かった。これらの結果から、マメ科の窒素回収能力が非マメ科に比べて低い(Nsが高い)のは、構造タンパク質の分解率が低いためであったと結論する。