| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-191  (Poster presentation)

熱帯落葉樹チークにおける湿度変化に伴う樹皮膨張の解明
The effect of moisture expansion of bark on seasonal increment in diameter of Techtona grandis trees

*松永寛之(三重大学), 松尾奈緒子(三重大学), 中井毅尚(三重大学), 吉藤奈津子(森林総研), 田中延亮(東京大学), 田中克典(グリッド)
*Hiroyuki Matsunaga(Mie Univ.), Matsuo Naoko(Mie Univ.), Takahisa Nakai(Mie Univ.), Natsuko Yoshifuji(FFPRI), Nobuaki Tanaka(The Univ. of Tokyo), Katsunori Tanaka(GRID)

タイ北部に生育する熱帯落葉樹チークの樹幹周囲長をバンド式デンドロメータで自記計測したところ,樹幹周囲長は外的要因により大きな増減を繰り返しながら肥大生長してゆくため,実際の肥大生長過程の推定は困難であった.そこで本研究では,チークの樹幹周囲長の変化に対する外的要因の影響度合いを明らかにするため,樹皮の吸湿実験を行ない樹皮の膨潤挙動を観察した.
チークの円盤試料外側から約3.0cm(L方向)×約3.0cm(T方向)×平均12.0mm(R方向)の樹皮片を16個採取し,外樹皮面以外の5面すべてをエポキシ樹脂接着剤で密封し供試試験体とした.これを飽和塩類法により10.8%から93.0%までの5段階に調湿した密閉容器内に静置し,それらの含水率と膨潤率の経時変化を計測した.その結果,含水率とR方向膨潤率の最大値はそれぞれ相対湿度93.0%における20%,16%であり,最大値に達するまでに2か月半以上の期間を要した.
ここで、乾季には完全に落葉し周囲長も変動しつつ横ばいになるため肥大生長は停止するものとし,雨季に速度一定で肥大生長すると仮定して、肥大成長量を樹幹周囲長変化から差し引き,平均樹皮厚で除して樹幹膨潤率を算出したところ,乾季の一時的な降水に対して樹幹膨潤率は水分吸湿実験における膨潤率の最大値に近い15%まで上昇した.この期間は樹液流速度がゼロ近くで停滞し,木部から樹皮への水分供給は少ないと考えられるため,相対湿度上昇に伴う吸湿もしくは樹幹流の直接吸水による樹皮の膨潤であった可能性が高い.一方雨季では樹幹膨潤率は最大25%に達し,乾季の膨潤率や水分吸湿実験における最大値よりも約10%高かった.以上より,樹液流速度が高い雨季には木部の膨潤や,樹体木部からの水分供給による樹皮の膨潤に加え,外部の相対湿度上昇や樹幹流吸収による膨潤が起きていたと考えられた.


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