| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-192 (Poster presentation)
一般に可視-近赤外波長の連続分光反射率の測定は、植物体の色素や有機物などの化学組成、細胞の成長段階を反映するため、葉や果実において非破壊かつ多角的な評価を可能にしている。本研究では、分光技術を土壌からの養水分吸収の役割を果たす樹木細根に用いた。細根の反射率に樹種間で違いがあるかを調べるとともに、寿命や生理機能を表す根特性と反射率の関係から、細根の反射率が表現する根の性質を明らかにすることを目的とした。対象樹種は、長野県南部の温帯林における針葉樹5種と広葉樹7種の計12種とした。対象木から根系を辿り細根系を採取し、洗浄した。根端から分岐を数えた次数分類を用いて、1次根から4次根までの無傷な根系を測定サンプルとし、427-977 nm (3.6 nm刻み、153バンド)の連続分光反射画像を撮影した。その後、4次根系の形態(平均根直径、比根長、根組織密度)、化学(窒素、カルシウム、カリウム濃度)および解剖(中心柱/皮層割合)を測定し、連続分光反射率との関係を解析した。12樹種の根系の連続分光反射率は、全ての樹種において920 nmをピークとする山形の曲線を示した。一方で樹種間の差が各反射率でみられた。連続分光反射率から代表的な4バンド(青:478 nm, 緑:546 nm, 赤:648 nm, 近赤外:847 nm)の反射率と根特性の関係を調べた。根特性のうちの5項目(平均直径、比根長、根組織密度、カルシウム濃度、中心柱/皮層割合)はそれぞれ特定の波長で有意な相関がみられた。この結果から、無傷の根系を測定することができる分光反射率を調べることで、根系の形態、化学、解剖的な特性を多角的に評価できることが示された。また、各樹種の根特性と分光反射率の関係を理解することで、種間を超えた根特性の一般的な評価を可能にし、土壌中の細根機能のより正確な推定を可能にすることが期待される。