| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-196 (Poster presentation)
内部捕食寄生蜂は寄生により宿主を死に至らしめるため、宿主昆虫は様々な寄生蜂抵抗性を発達させている。その中でも、細胞性免疫応答である包囲化作用は、昆虫における主要な抵抗手段である。キイロショウジョウバエでは3種類の血球が包囲化作用に関与することが明らかになっており、その免疫機構については詳細に研究が行われてきたが、その遺伝的基盤には未解明な点が多い。先行研究により、キイロショウジョウバエに内部寄生する寄生蜂Leptopilina japonicaに対する包囲化作用に関与するゲノム領域が第二染色体左腕に2つ特定されており、それぞれ53個と82個の候補遺伝子を包含している。このゲノム領域を欠失させると寄生時に包囲化作用が起こらなくなるため、異物の認識もしくは血球の分化に関する遺伝子が存在する可能性が示されている。これらのゲノム領域は重複していないため、それぞれ最低1つの寄生蜂抵抗性遺伝子を含むことが予想される。本研究ではこれら2つのゲノム領域内に存在する寄生抵抗性遺伝子を特定するため、RNA干渉法(RNAi)によるスクリーニングを行った。RNAiはGAL4-UASシステムを用いて行い、計106個の候補遺伝子を個別に標的としたRNA系統と、全身の細胞でGAL4を発現するtub-GAL4系統を交配する事で、RNAiの駆動した幼虫を作出した。この幼虫にL. japonicaを寄生させ、寄生抵抗の成功率を計測する事で、RNAiが寄生抵抗性に与える影響を評価した。その結果、RNAiにより寄生抵抗性が有意に低下した遺伝子が21個特定された。これらの、寄生性抵抗性に関与する可能性が示唆された遺伝子の中には、血球分化に関与する事が知られている遺伝子も含まれていた。今回寄生抵抗性との関与が示唆された遺伝子が、包囲化作用のどのプロセスに関与しているのかについて、さらなる研究が必要である。