| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-207 (Poster presentation)
カリブ海に生息するアノールトカゲは、適応放散のモデルとして多くの研究が行われてきた。このアノールトカゲは生息する樹木の高さによって、生態的・形態的・行動的に似ているエコモルフと呼ばれる6つのグループに分類される。過去の系統学的研究から、カリブ海に生息するアノールトカゲにおいて異なるエコモルフへの分化が島ごとに独立して起こっており、エコモルフごとに単一のクレードを形成することがわかっている。Grass-Bushと呼ばれるエコモルフの種は、細い胴、長い尾、長い後脚を持ち、草むらでの生息に適している。キューバに生息するAnolis ophiolepisは、Grass-Bush型のエコモルフを示すが、キューバの単系統を形成する他のGrass-Bush型の種と異なり、Trunk-Ground型のクレード内で独立に進化したことがわかっている。そのため、A. ophiolepisを用いることで、Trunk-Ground型からGrass-Bush型への進化に関わる遺伝的要因を調べることが可能になる。本研究では、このクレード内に属する6種のTrunk-GroundとA. ophiolepisの遺伝子を比較することによって、異なるエコモルフへの進化のために選択を受けた遺伝子の検出を試みた。RNAseqのデータをもとに、非同義置換率dNと同義置換率dSの比(dN/dS)を計算することで、A. ophiolepis特異的に正の選択を受けた遺伝子を検出した。本発表では、検出された遺伝子の中で新たな生息環境に進出するために重要だと考えられる遺伝子を考察する。