| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-209  (Poster presentation)

フタイロカミキリモドキにおける性的二型形質の緯度クラインと共進化 【B】
Latitudinal cline and coevolution of sexually dimorphic traits in the false blister beetle 【B】

*里見太輔(神戸大学), 小汐千春(鳴門教育大学), 立田晴記(琉球大学), 工藤慎一(鳴門教育大学), 高見泰興(神戸大学)
*Daisuke SATOMI(Kobe University), Chiharu KOSHIO(Naruto University of Education), Haruki TATSUTA(University of the Ryukyus), Shin-ichi KUDO(Naruto University of Education), Yasuoki TAKAMI(Kobe University)

 性的形質の進化は,繁殖利益を高める性淘汰と,生存コストを低減する自然淘汰に影響され,またそれらの淘汰圧は環境要因に依存することがある.生存や繁殖が容易な穏やかな環境では,個体群サイズや密度が増加して繁殖をめぐる争いが強まり,また形質の遺伝分散が増加するため,性淘汰に対する進化的反応がより大きくなると予想される.しかし,性的形質の進化の環境依存性を明らかにした研究例は少ない.
 フタイロカミキリモドキは,後脚に顕著な性的二型を示し,オスは発達した後脚で抵抗するメスを把握し強制的に交尾しようとするのに対し,メスはもがきや腹まげといった拒否行動に加え後脚を用いた抵抗を示す.これは,雌雄の交尾頻度をめぐる性的対立により,オスの操作とメスの抵抗との間で拮抗的共進化が生じた可能性が考えられる.さらに,これまでの研究で本種のオス後脚は個体群間で大きく変異することが明らかになっている.そこで本研究は,本種の分布域を広くカバーする22個体群を対象に,雌雄の形質(体サイズ,後脚形態,アロメトリー)と環境要因の指標である緯度との関連と,後脚形態の雌雄間の共変動を調査した.
 主成分分析により得られた雌雄の後脚形状(PC2)とメスの体サイズは,緯度と有意に相関していた.低緯度ほどオス後脚腿節はより太くなり,メス後脚脛節はより細長くなった.さらに,雌雄の後脚形態(PC1,PC2)は有意に共変動していた.これらの結果は,緯度に関連した環境に依存した拮抗的共進化により,性的形質の多様化が生じたことを示唆する.


日本生態学会