| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-210 (Poster presentation)
生物の進化の原動力である遺伝的変異には様々な要因があり、その一つとして近年トランスポゾンによる変異が注目されている。トランスポゾンは宿主となる生物のゲノムの複製とは独立に自らゲノム中を移動・増殖する性質を持っており、移動先の遺伝子の破壊や発現量の変化、染色体構造の変化の原因になることが知られている。このためトランスポゾンは突然変異率を増大させ、変動環境下で進化を促進している可能性が考えられている。近年になってC. elegansの姉妹種として発見された線虫C. inopinataは、C. elegansに比べて、生活環境や体サイズなど生態的・形態的に大きく異なっている。Inada et al. (in pres.)により、両種の体サイズの差に重要なL4幼虫期およびYoung Adult期で発現量の異なる遺伝子群が明らかになった。本研究では、C. inopinata系統で生じたトランスポゾンの挿入が、両種の体サイズの進化にどう影響したのかを解明することを目的とした。まず、遺伝子内でC. inopinata特異的なトランスポゾンの挿入が起こった遺伝子群を取得し、トランスポゾンの挿入により機能が変化した候補遺伝子群とした。次に、イントロン内および近傍領域でC. inopinata特異的なトランスポゾンの挿入が起こった遺伝子群と、L4幼虫期およびYoung Adult期で発現量の異なる遺伝子群との共通な遺伝子群をトランスポゾンの挿入により発現パターンが変化した候補遺伝子群とした。得られた2種類の候補遺伝子群に対して、先行研究で明らかになっている遺伝子の機能、挿入したトランスポゾンの種類や位置、スプライシングの変化の有無などを調べ、C. inopinata特異的なトランスポゾンの挿入が遺伝子の機能や発現パターンに与えた影響を考察する。今後、C. inopinataの進化に重要な影響を与えた候補となるトランスポゾンに対して遺伝子編集を行い、その影響について確かめる予定である。