| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-215 (Poster presentation)
体内受精を行う動物はしばしば交尾器形態が近縁種間で多様であるが、一部の動物においては雌雄の交尾器は互いに対応した形態を持つ。この雌雄間のマッチングは安定化選択を受けるため、なぜ交尾器形態が種間で多様化することができるのかはよくわかっていない。オオオサムシ亜属の一部の種は雄の交尾器の一部である交尾片と雌の膣盲嚢が対応した形態をもつが、その一方で、これらの交尾器形態は近縁種間で多様化している。我々はオオオサムシ亜属における交尾片と膣盲嚢の多様化の遺伝基盤を探るために、その中でも最も極端な形態を示すドウキョウオサムシとその近縁種2種を用いて、RNA-seqを用いた発現量解析を行った。交尾器が形成される前蛹及び蛹期において、種間で発現量が異なる遺伝子は雄で4445個、雌で4317個見つかった。これらの種間発現変動遺伝子のほとんどにおいて、雄で発現量が増加しているものは雌でも増加しており、またその逆も然りであった。雌雄いずれかの種間で発現量の異なる5822個の遺伝子について種内雌雄間で発現量の異なる遺伝子は8個のみであり、これらもまた雌雄で同じ種間発現変動パターンを示した。これらの結果は雄の交尾器形態の変化に関わる発現量変化が同時に雌でも起こることを示唆し、雌雄に共通する発現量変化が交尾片・膣盲嚢形態の共進化に関係している可能性を示す。