| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-220 (Poster presentation)
捕食者による捕食を回避するために,被食者はさまざまな対捕食者戦略を身につけている.植食性昆虫の防衛形質の進化には,寄主植物の種類や寄主植物上のマイクロハビタットなどが影響する可能性がある.たとえば,狭い隙間に隠れる行動は捕食者との遭遇頻度を減少させる一方で,防衛形態が発達しにくくなるかもしれない.カメノコハムシ亜科(甲虫目:ハムシ科)は背面が棘で覆われる種,体の周囲が薄く広がった扁平縁を持つ種,それらを持たない単純な形の種など多様な外部形態を待つ種を含み,棘や扁平縁は捕食者に対する防衛機能があると考えられている.そこで本研究は,カメノコハムシ亜科の多様な防衛形態と寄主植物形質に着目し,対捕食者適応の側面から寄主植物に応じた防衛形態の進化仮説を検証した.
本亜科の分子系統樹を用いて系統種間比較による仮説検証を行った結果,防衛形態の獲得(少なくとも棘または扁平縁のいずれかを持つかどうか)は双子葉植物の利用および開放的なハビタット(葉の表面)での生活と有意に相関していることが示された.このことから,双子葉植物は単子葉植物に比べて新葉の隙間のような隠れ場所が少なく,双子葉食種は捕食者に遭遇しやすくなるため,防衛形態を獲得した可能性が考えられる.あるいは,発達した防衛形態を獲得した種は狭い隙間に入りにくくなるため,葉の表面を利用するようになったのかもしれない.また,防衛形態のタイプ(棘または扁平縁)は寄主植物の種類(単子葉または双子葉)と有意に相関していることが示され,棘を持つ種は単子葉植物,扁平縁を持つ種は双子葉植物を利用する傾向が認められた.このことは,寄主植物の種類によって捕食者相が異なり,それに応じて防衛形態のタイプが異なっている可能性を示唆している.以上の結果より,寄主植物形質の多様性が,捕食圧を通じて植食性昆虫の外部形態の多様化をもたらしうることが示された.