| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-226 (Poster presentation)
生息地の音響環境の違いに応じて、さえずりに使われる周波数帯が変化する感覚便乗の存在が多くの鳥類で示されてきた。音響環境は音の減衰率と環境騒音の周波数分布で表され、高緯度地域と比べて低緯度地域ほど、密な植生による高周波数音の減衰が起こりやすく、セミなどの昆虫による高周波数帯での環境騒音が大きい。このため、種間比較を行った先行研究では、低緯度地域や植生が密な森林に生息する鳥種ほど低周波数域でさえずる進化的な制約を受けていた。異なるさえずりをもつ者同士では、遺伝子流動が減少し、生態的種分化のきっかけとなることが考えられる。
しかし、さえずりを種内で比較した先行研究では、集団間での音響環境に応じたさえずりの違いと集団の遺伝的構造は必ずしも対応関係がなかった。これは、先行研究で対象とされた鳥種がさえずりを学習する鳴禽類であり、出生地外の生息地に分散した場合にも分散先のさえずりを学習できるためであると考えられる。このような鳥種では、集団ごとのさえずり周波数の違いは、出生地外への分散を妨げない。
本研究では、さえずりを学習しない非鳴禽類であるアカショウビンを対象として、南西諸島の生息地間で音響環境とさえずりの特徴の違いを調べた。さえずり周波数は生息地によって異なっていた。また、音声再生実験により、さえずりの違いは集団毎に認識され、同じ特徴のさえずりにのみ強く反応することがわかった。さえずりへの反応の違いは、同類交配による生殖前隔離の存在を示唆した。さらに、ミトコンドリアCOI領域のハプロタイプとさえずり周波数の違いは一致していた。さえずり周波数が低い集団の生息地の騒音は大きい傾向があったが、はっきりした違いを見つけることができなかった。