| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-230 (Poster presentation)
オスへ働く性淘汰は時としてオスの加害形質を進化させる。そしてメスはその加害形質に対して対抗形質を進化させる。例えばモデル生物であるヨツモンマメゾウムシ(以下:ヨツモン)のオスは交尾器にトゲ状の構造を持ち、このトゲは同種のメスの産卵数を減少させる。このトゲが暴力的なヨツモンの系統ほど、メスは対抗形質として交尾器を厚くすることが知られている。
このような加害形質が他種へ働くことによって、種間交尾とそれに伴うコストを生じ、繁殖干渉を引き起こしていると考えられる。そして、このことはアズキゾウムシ(以下:アズキ)と近縁種のヨツモンを用いた先行研究から明らかになっている。また、アズキのオスのトゲが暴力的なほど、ヨツモンへより強力な繁殖干渉を引き起こすことが知られている。
しかし、繁殖干渉は求愛を受けるメスの対抗形質によっても左右される。
我々の研究室で2004年から飼育方法を変えて累代し続けたヨツモンの2系統(hQとhQb)では、hQのメスの方がアズキのオスからの繁殖干渉を強く受けることが分かっている(未発表)。この結果から、hQbのメスの方がhQのメスよりもストック内での性淘汰の過程で、対抗形質を進化させてきたと考えられる。
本研究では、ヨツモンにおいて、性淘汰の影響を受けると考えられる複数の形態形質に注目し繁殖干渉の説明を試みる。具体的にはオスの前脚と交尾器と体長、メスの後脚と交尾器と体長についてhQとhQbの間で比較を行う。これらの結果を、先行研究で得られているメスの求愛に対する拒否の程度や繁殖干渉の程度と比較し、繁殖干渉を引き起こす"部品達"と、その"部品達"を生み出す淘汰について今後の展望も踏まえて議論を行う予定である。