| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-237 (Poster presentation)
人造湖であるダムは、流域全体の生物・環境に大きな負の影響を与えることが知られている。今後、生物や環境に配慮したダム管理を進めていく上で、ダムに生息する生物の特徴を把握する必要がある。ダムを利用する代表的な上位種としてミサゴPandion haliaetusが挙げられる。本種は魚食性の猛禽類であり、水辺生態系のアンブレラ種である。かつては全国の沿岸域に広く分布していたが、近年、内陸部、特にダムで顕著な増加傾向にあることが明らかになっている。内水面における本種の増加要因の究明は今後の河川・ダム管理において重要な意味を持つ。そこで本研究では河川水辺の国勢調査のデータ(1991年~2010年)を用いたミサゴのダム選好性の解析と、岩手県のダム湖に営巣する本種のペア計3巣(2017年と2018年)を対象とした巣内カメラによる餌内容解析を行った。これにより本種の内陸部での増加要因を明らかにし、今後の河川・ダム管理における生態系管理の在り方について考究する。
河川水辺の国勢調査のデータ解析では、ミサゴは湖面積が大きく、オオクチバスが多いダムほど確認率が高いという結果になった。通年表層を利用する大型魚類であるオオクチバスは、本種にとって格好の餌資源となっている可能性が考えられる。さらに巣内カメラによる餌内容解析の結果、調査地のミサゴはオオクチバスやゲンゴロウブナなどの外来魚を多く利用していることが明らかになった。これらの種は全国のダムに広く分布しているため、ミサゴの分布拡大に大きく寄与していると思われる。
以上の結果から、本種の内陸部での増加には、ダムという人工環境と、そこに生息する国内外外来魚の存在が関与している可能性が示された。今後の河川・ダム管理においては、ミサゴ-外来魚の関係性を認識した上で、河川・ダムでも本種がアンブレラ種として機能するような生態系管理が望まれる。