| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-239 (Poster presentation)
我が国の竹林はマダケ属の主にモウソウチク、マダケ、ハチクで構成され、材や食用タケノコ等多用途に利用されてきた。また、モウソウチクでは全国の集団の遺伝的多様性が同一クローンと言えるほど低いことが報告されており、竹林は人間の移植により日本全国に分布を広げたとされている。しかし、竹林の立地については地域スケールでの検討に留まっており、竹林分布がどのような環境要因特に地形要因で決まっているのか、翻ってどのような土地に選択的に植栽されてきたのか、また残存してきたのか一般的な議論はなされていない。これらを明らかにすることでマダケ属の生態的特性の把握、竹林管理の指針となりうる。そこで本研究は、重点的な現地調査と空中写真判読により、長野県全域のほぼ全ての竹林分布地点を収集し、その分布を規定している気候要因を明らかにした上で、竹林分布地点における地形要因(斜面傾斜、斜面方位)を解析した。
その結果、長野県の竹林分布を良く説明する気候要因は最低気温と積雪深であると推定され、竹林は最寒月の日最低気温の月平均が-3.7〜2.4℃、年最深積雪深が253.7cm以下の地域にのみ分布していた。これは、低温による光合成の抑制や根系での水分の吸収阻害および積雪による稈の倒伏により竹林の分布が制限されていると考えられる。さらに竹林は南向きの10〜20度の緩傾斜地に多く立地する傾向があった。この結果から、平坦地は田畑や住宅として利用されており、竹林は日当たりの良い向きの田畑の周辺、里山林の林縁の斜面に植栽されてきたと考えられる。この竹林分布地点における地形要因に関して、地域ごとの気候要因、推察される竹林の植栽履歴や土地利用との関係性をさらに考察する。