| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-243 (Poster presentation)
生物の個体数変動を正確に予測することは、生態系管理における重要課題である。例えば琵琶湖では、アオコや異臭味の原因となるプランクトンの発生が問題となっており、その対策や管理に役立てるため、原因となるプランクトンの個体数変動を予測することが求められている。しかし、生態系の動態を駆動する詳細なメカニズムは知られておらず、生態系が時間と共にどのように変化するのか、また環境の変化にどのように反応するのかを正確に予測することは容易ではない。さらに、生態系は、多数の生物や非生物要素が状況依存的に相互作用するシステムであり、この非線形性が正確な個体数変動の予測をより困難にしている。Empirical Dynamic Modeling (EDM)は、非線形力学に基づいて動的システムをモデリングすることを可能にするノンパラメトリックなフレームワークであり、これを利用することで特定のモデルを仮定する必要なく、生態系のような複雑な動態システムの変動を予測することができる。本研究では、生物の個体数変動を正確に予測するために必要な条件を明らかにするため、EDMにおける設定条件やデータ選択が予測精度にどのように影響するかを調査した。具体的には、過去39年における琵琶湖の621種の植物プランクトンの時系列データ(1週ごと)を使用し、種・科・綱の各系統分類学的スケールにおける予測精度の時間変化を調べることで、予測を正確に行うことのできる最適な系統分類学的スケールを調査した。その結果、種や科に比べて綱の予測精度は時間変化が少なく安定しており、予測精度も比較的高かった。この予測精度の系統分類学的スケール依存性が生じた理由として、系統分類学的スケールによってシステムを駆動する動態の変化の仕方が違うことや、出現頻度の違いによってデータの質に差があることなど様々考えられるが、その理由の特定は今後の課題である。