| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-245  (Poster presentation)

熱帯の湿地における環境DNA分析手法の検討:ヴィクトリア湖のマンソン住血吸虫を例に
Application of environmental DNA method in tropical wetland: example of Schistosoma mansoni in Lake Victoria, Kenya

*大澤亮介(神戸大・院・発達), 板山朋聡(長崎大・院・工), 二見恭子(長崎大・熱研), 濱野真二郎(長崎大・熱研), 源利文(神戸大・院・発達)
*Ryosuke Osawa(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U), Tomoaki Itayama(Grad Sc Eng, Nagasaki U), Kyoko Futami(Inst Trop Med, Nagasaki U), Shinjiro Hamano(Inst Trop Med, Nagasaki U), Toshifumi Minamoto(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U)

住血吸虫症(Schistosomiasis)は淡水貝から水中に放出された住血吸虫属(Schistosoma)のセルカリアが経皮感染することによって引き起こされる感染症である。住血吸虫は、アフリカを中心に世界中に広く分布しており、その分布域には熱帯雨林気候やサバナ気候が含まれている。そのような雨量が大きく変化する地域では、中間宿主である淡水性巻貝分布の季節変化に伴い、住血吸虫の分布も変化すると予想される。また、近年灌漑用水路の増加による宿主貝の分布域拡大や、ヒトの移動による終宿主を介した病原体拡散も考えられる。しかし、従来の宿主貝から病原体を検出する調査手法は労力がかかり、広域において状況を迅速に捉えることは難しい。環境DNAは環境水のみから検出可能であり、広域で多数のサンプルでも容易に解析できるため、環境DNAの検出を用いた住血吸虫のモニタリング法が提唱されている。しかし、現在の方法では熱帯の湿地など濁質や夾雑物が多い水に対しては、検出感度が不十分である。そこで、検出系の改善と野外適用を目的として研究を行った。本研究ではヒトに感染するマンソン住血吸虫を対象種とした。まず水を濾過するフィルターの最適孔径を決定するために、住血吸虫の環境DNAのサイズ分画を行った。住血吸虫の成長段階に従い水槽を6種類用意して実験を行った結果、成長段階によって住血吸虫の環境DNAの大きさの分布は異なっていたが、全般に孔径の大きさが3µmまたは0.8µmのフィルターが比較的有用性が高いと考えられた。さらに、実水域の濁質を含む水サンプルを用い、より最適なフィルターについて検討した。ケニアのヴィクトリア湖岸において採水し、フィルター孔径やプレろ過の有無など5種類の濾過条件で検出率の違いを確かめた。その結果、比較的実験の手間が少なくより多く濾過が可能な孔径3µmのフィルターを用いる濾過法が有効である事が判明した。


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