| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-246 (Poster presentation)
環境DNA分析は、環境水に含まれるDNAを分析し水生生物の生息現況を評価することができる手法として注目されている。その中でも次世代シーケンサーを用いた環境DNAメタバーコーディング法は、水試料のみから魚類の種組成を網羅的に明らかにできる強みがある。現在標準的な手法として行われている捕獲調査手法に比べると、現地での調査は水をくむだけであり、調査努力量が大幅に削減できる。ただ、制限なしに採水地点を増やすことは困難なため、採水する地点をあらかじめ絞り込む必要があるが、まだその配置や数についてのコンセンサスは得られていない。例えば河川の場合、流心の他に溜まりやワンドなど様々な水域が存在し、その違いによって生息する魚種も異なることが考えられる。本研究では、川幅約25mの小規模河川の約1㎞に渡る流程内において流心および溜まり・ワンドから採水し、環境DNA分析による検出種の比較を行った。その結果、溜まり・ワンドで検出された種は全て流心でも検出され、さらに流心の方が検出種数が多かった。これにより、小規模河川では採水地点を異なる水域ごとに設定する必要性は低いことが示唆された。また、採水地点数の増加が検出種数に及ぼす影響を評価するために、流心において採水地点数を50m間隔で増やし、地点ごとに検出される種組成の違いを評価した。地点ごとに検出された種組成の非類似度と地理的距離(採水地点間距離)の相関をマンテル検定によって求めた。結果、0mから約100mまでは、種組成の非類似度と地理的距離の間に有意な正の相関がみられたが、約220m以降の地点では有意な相関がみられず、種組成の違いが頭打ちになることが示唆された。よって、対象とした河川の規模では、流心での採水で魚類相をおおむね把握することが可能なため、採水地点を細かく設定しなくてもよいことが示唆された。