| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-248 (Poster presentation)
本研究では,里山の景観要素同士の接合部分(以下,景観接合部と呼ぶ)に広く分布し,里山生態系内の物質循環に深く関与することが知られる土壌動物の群集解析と,里山の景観接合部における環境分析を実施し,森林と農地の接続性の違いが景観接合部に形成された環境勾配,土壌動物群集の存在様式,これらが駆動する物質循環機能に与える影響について定量的に評価した.
新潟県佐渡市小佐渡周辺の水田畦畔と森林との接続性が異なる3つの里山に,林内から畔にまたがる長さ40~80mのベルトトランセクトを計12本設置した.各ベルトトランセクトの林内2地点,林縁1地点,畔2地点においてハンドソーティング法とツルグレン装置を用いて土壌動物群集の採集を行った.採取した土壌動物群集を食性が異なる,デコンポーザー,捕食者,シュレッダー,微生物食者,植食者,雑食者,トビムシの7つの機能群に分類し,各地点の機能群組成を比較した.各地点の土壌水分量,土壌硬度,開空率,リター量,植生を調査し,環境勾配の比較を行った.ベイトスティックを用いた有機物の分解実験を行い,土壌動物群集が有する物質循環機能を定量化した.
景観接合部に形成されたリター量の勾配のピークは,景観接合部の分断強度が高まるにつれて林内側へと後退することが示された.マント群落や袖群落などの林縁構造は森林内のリター量を増加させ,林縁付近における物質循環機能を高める可能性が示唆された.景観接合部を分断する構造物は,それ自身が土壌動物群集の移動を阻害する障壁となったり,土壌水分量の環境勾配を改変したりすることで,捕食者の個体数密度を低下させ,畔に生息する土壌動物群集の機能群組成を改変することが示唆された.また,景観接合部の分断が存在する畔であっても,デコンポーザーやシュレッダーの個体数密度が増加し,高い物質循環機能が維持されている地点が存在した.