| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-251 (Poster presentation)
潮干狩りは春から夏にかけて海辺の干潟においてアサリを主としてさまざまな貝を収穫するレジャー活動である。複数の潮干狩り場では、アサリの人工的な散布が行われているが、自然個体群や潮干狩り客によるアサリの収穫圧に関する知見はほとんどない。本研究では、潮干狩り場におけるアサリ資源量、潮干狩り客の収穫量と満足度について調査を行い、潮干狩り場における資源管理の持続可能性について検討を行った。調査地として、アサリの人工散布が行われているふなばし三番瀬海浜公園(千葉県船橋市)を選択した。
調査の結果、公園干潟で潮干狩り期間中に収穫されたアサリは年間56 - 73個体/m2と推測され、周辺の干潟で観測された在来アサリの生息密度(2008 – 2017年には年間平均1 - 8個体/m2)を大きく上回った。1日あたりのアサリの収穫総量は潮干狩り客数が増えるほど増加していた。そのため、本公園が在来のアサリで潮干狩りを行う場合、現状の6 – 11分の1まで潮干狩り客の数を制限する必要があると考えられる。一方、潮干狩り客のアサリ収穫量と3つの項目(収穫量、自然とのふれあい、レジャーとして楽しむこと)についての満足度とロイヤルティ(再来訪意志、他者への紹介意志)を尋ね、その関係についてパス解析を行った結果、潮干狩り客のアサリ収穫量は満足度やロイヤルティに有意に影響を及ぼしていることが明らかになった。ただし、パス係数の比較から、潮干狩り客は収穫量よりもレジャーとして潮干狩りを楽しむことを重視し、楽しむことの満足度はロイヤルティに対しより強い影響を与えていることが示唆された。そのため、少ない収穫量でも高いロイヤルティを保つために、レジャーとしての楽しさを高めるような取り組み(同行者との交流をさらに活発にさせる企画や会場の安全性を重視した整備)が重要と考えられる。