| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-254  (Poster presentation)

核DNAマーカーを用いたマアジ環境DNAの放出率および分解率の推定
Estimation of eDNA shedding and degradation rates of Japanese jack mackerel using nuclear DNA marker

*有本美於(神戸大・発達), 徐寿明(神戸大・院・発達), 村上弘章(京都大・舞鶴水産実), 益田玲爾(京都大・舞鶴水産実), 山本哲史(京都大学・院・理), 源利文(神戸大・院・発達)
*Mio Arimoto(Fac Human Dev, Kobe U), Toshiaki Jo(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U), Hiroaki Murakami(Maizuru Fis Res Sta, Kyoto U), Reiji Masuda(Maizuru Fis Res Sta, Kyoto U), Satoshi Yamamoto(Grad Sc Sci, Kyoto U), Toshifumi Minamoto(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U)

新しい生物モニタリング法として環境DNA(eDNA)手法が注目される一方、eDNAの基礎情報、特に核DNAマーカーを用いたものは数少ない。eDNAの基礎を蓄積することはeDNA手法の応用に寄与し、核DNAマーカーの知見は核DNAとミトコンドリアDNA量を比較して行う生物の繁殖期や場所の推測につながるだろう。本研究ではマアジ(Trachurus japonicus)を対象とした水槽実験で核DNAマーカーを用いてeDNAの放出率、分解率、サイズ分布を推定し、それらへの水温の影響を検証した。またミトコンドリアDNAを対象とした同様の先行研究と比較し、対象領域(マーカー)の違いによるeDNA検出の特性を明らかにした。水槽実験では4水温区 (13、18、23、28℃) を設定し、各水槽にマアジを投入した。その後マアジの引揚げ前後で時系列的に採水し、eDNA濃度を測定した。分解率を全水槽のeDNAの動態に当てはまるような非線形モデルで推定した結果、eDNAの分解率は高水温区ほど高くなった。この傾向は両マーカーで一致したが、全ての水温区で核DNAマーカーを用いた方がeDNAの分解率は高くなった。また放出率に対し二元配置分散分析で水温とマーカーの影響を検証した結果、eDNAの放出率には水温、マーカー、交互作用すべてが影響していた。放出率は両マーカーともに23℃で最も高かった。さらに、マアジのeDNAが最も多く検出されたのは両マーカーともに3-10µmの分画であった。解析の結果10µm以上および3-10µmの分画では高水温区ほどeDNA濃度が減少したが、0.8-3µmおよび0.4-0.8µmの分画ではそのような傾向は見られなかった。本研究を通して魚類の核とミトコンドリアに由来するeDNAの水温別の放出および分解について検討でき、結果、核DNAはすでに知見が多いミトコンドリアDNAと相似した振る舞いをすることが考えられる。本研究はeDNA基礎情報と核DNAマーカーの知見を得ることができ、eDNAの由来および状態に関する知見のみならず手法の効率化や応用に大きく寄与するだろう。


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