| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-255 (Poster presentation)
世界的に森林伐採や土地改変による森林生態系の劣化が報告されており、森林再生の重要性が高まっている。森林再生には、周囲の種子供給源からの移入による天然更新を期待する受動的な手法と植林や防風柵の設置といった能動的な手法がある。しかし、生態系が一度劣化すると人為介入なしでは回復不可能となることがあり、受動的な手法による森林再生は不可能な場合がある。また、風が卓越し、樹木の成長を妨げる場所では、森林が減少すると風による影響を受けやすくなり、より森林が発達しにくくなるという正のフィードバックが加速する。したがって、より効率的に森林再生を行うためには、能動的な手法が必要な場合が多い。しかし、資金や労働力は限られているため、すべての森林再生対象地で人為介入を行うことは現実的ではない。近年では、外来種を排除するばかりではなく、うまく利用することの有効性が指摘されており、外来種の利用による森林再生の効率化が期待できると考えられる。
そこで、本研究は強風によって樹木が育たない所が存在する北海道の知床国立公園の森林再生地を対象に、森林発達の指標となる樹高や林冠の被覆率といった林冠構造を決定する要因を明らかにすることを目的とした。北海道では国内外来種であるカラマツの空間配置に着目した。2004年6月に取得された航空機LiDARのデータを用いて、樹高と林冠の被覆率を算出した。1960年代から1990年代に植栽された人工林において植栽種ごとに樹高を比較すると、カラマツが高い傾向があり、カラマツ林が防風林として機能する可能性が考えられた。また、風上にカラマツ林が存在する林分では、カラマツ林からの距離が近いと樹高が高くなる傾向が見られた。樹種、植栽年、地形の他に、カラマツの空間配置が林冠構造にどのような影響を与えるか明らかにした上で、カラマツの防風機能により、カラマツが短中期的に森林再生に役立つ可能性について議論したい。