| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-256 (Poster presentation)
道路やダムなどの建設事業に伴う環境アセスメントにおいて、猛禽類の生息状況等を把握する調査が実施されている。しかし、調査で得られるデータは周年の行動の一部であり、調査データの集積が必ずしも十分であるとはいえない。調査頻度を高めることは、調査圧による繁殖阻害や、コストの増大をまねく。そこで、本研究では、費用対効果が大きく調査圧の少ない調査手法として、録音した音声のみを使い対象種の「在・不在」を自動で判別する調査手法の開発を目的とする。なお、対象種は環境省レッドリスト2018において準絶滅危惧(NT)に指定されているオオタカ(Accipiter gentilis)とした。
以下に示すとおり「オオタカの鳴き声自動判別システムの構築」及び「新しい調査手法の確立」の2つのプロセスで行った。
[オオタカの鳴き声自動判別システムの構築]
システムの構築には、繁殖期間中の5~7月にオオタカの営巣地周辺で、一般的なICレコーダーを用いて録音した音声を使用した。まず、録音した音声データから鳥類の鳴き声や録音時に発生したノイズのスペクトログラム画像を作成した。当該画像を「オオタカ」と「その他の音」の2クラスに分類した学習用データセットを作成した。このデータセットをAI技術の1つであるConvolutional Neural Network(CNN)により学習させ、オオタカの鳴き声を判別するシステムを構築した。構築したシステムに対し、交差検証を行うと95%程度の精度が得られた。次に、システム構築の際には使用していない時期・録音地点での録音データに対する汎化性能を評価した。
[新しい調査手法の確立]
新しい調査手法の確立にむけて、好適なICレコーダーの設置条件を検討した。まず、オオタカの巣の直近、巣から100m、300mの3箇所で録音した音声を比較し、どこまで鳴き声を識別できるかを調べた。次に、録音した音声を月ごと及び時間帯ごとに比較し、より効果的に調査ができる時期・時間を調べた。