| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-259 (Poster presentation)
グリーンインフラ(Green Infrastructure)は、自然の恵みや力を社会に取り込み、課題解決や豊かさの創造に繋げる考え方である。都市の代表的なグリーンインフラである都市緑地には、大気や水の浄化、ヒートアイランドの緩和、生物多様性保全、人々の癒しやストレス緩和、子どもの健全な成長など、多様な機能がある。他方で、人口減少時代に突入した日本では、各地で空き地や空き家が生じており、都市緑地や公園に対する住民ニーズも変化している。そのため、今後の街づくりを考える上で、このような緑地や空き地をグリーンインフラとして有効活用し、持続可能かつ自然と調和した暮らしやすい都市に転換していくための方策が求められている。しかしながら市民のニーズは一様ではなく、年代や世帯構成、ライフスタイルなどによって異なる可能性が高い。そこで本研究では、茨城県守谷市を対象に、大規模アンケート調査を用いて市民の緑地に対する意識の違いを明らかにし、市民のニーズを考慮した緑地計画の提案を目指す。
守谷市は、東京に近く、市内には高層マンションや住宅地とともに、農村や雑木林、河川敷などの良好な里山景観が広がっている。アンケートは、守谷市の協力で市内5,238世帯に戸別配布し、郵送で回収した。その結果、特定の性別や年齢構成に偏ることなく、子育て世帯や高齢者世帯からも多くの回答を得られた(回収1,332部、回収率25.5%)。普段よく利用する公園や緑地について、利用目的を尋ねたところ、「子どもの遊び場」、「健康増進」、「リフレッシュ」などの回答が多く得られた。他方で、今後も守っていきたい緑地については、「里山林」が最も多く、「公園」、「街路樹」の順であった。本講演では、これらのニーズと回答者の属性(年齢や性別、世帯構成、勤務形態など)との関係、およびそれらを考慮した効果的なグリーンインフラの導入策について議論する。