| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-263 (Poster presentation)
持続可能社会の構築には,生物多様性に配慮した再生可能エネルギーの導入が重要である.そこで本研究では,異なる再生可能エネルギーの導入によるエネルギー供給可能量と動物種への潜在的影響についてシナリオ分析を行った.
北海道東部の別寒辺牛川流域では人口減少が進んでおり,森林と牧草地を将来にわたって維持・管理することが課題である.そこで,耕作放棄地を活用して再生可能エネルギーを導入する2つの人間社会および土地管理シナリオを設定した.1つ目は,地域の生態系を維持しながらエネルギーを地産地消するために耕作放棄地に再生した木質バイオマスを熱利用するシナリオ,2つ目は地域のビジネスとしてエネルギーを生産する目的で耕作放棄地に太陽光パネルを設置して電力利用するシナリオである.耕作放棄地の分布拡大の予測をもとに,森林景観モデルのLANDIS-IIで2016年から2100年までの耕作放棄後の植生の遷移をシミュレーションした.LANDIS-IIで計算された土地被覆図と地上部バイオマス量から,(1) シナリオ別に得られると期待されるエネルギー量,(2) 河畔域と陸域の自然度を代表すると考えられるシマフクロウ・クマタカの生息適性指数,(3) 生物多様性の代理指標である里山指数を評価した.
2100年時点でのエネルギー供給可能量は,太陽光パネルシナリオが木質バイオマスシナリオの約20倍となった.対象地域の14.8 % の面積に当たる耕作放棄地がエネルギー生産に利用され,木質バイオマスシナリオでは広葉樹林化し,太陽光パネルシナリオでは太陽光パネルの設置用地となった.この結果,シラカンバを中心とした広葉樹林への天然更新が生息地に影響を与えた.天然林の分布に違いが生じることが示された.以上より,耕作放棄地を利用した再生可能エネルギーの導入ではエネルギービジョンによって生態系との親和性が異なることが示唆された.