| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-310 (Poster presentation)
訪花者は口器の長さに対応した花筒をもつ植物から効率的に吸蜜する。これまで、昆虫類や鳥類など様々な訪花動物において、長い口器をもつ訪花者は長い花筒をもつ植物を訪れることが観察されてきた。しかし、このような口器と花筒との対応関係は、訪花者が餌資源として花蜜に依存している度合いによって大きく変化する可能性がある。つまり、花以外の蜜餌資源を利用し花蜜への依存度が低い種では、口器の長さと花筒長の関係が弱くなるかもしれない。しかし、訪花者の食性が口器と花筒との関係に及ぼす影響はこれまでほとんど検証されてこなかった。この影響を明らかにするために、本研究では、多様な食性をもつ夜行性ガ類を対象に口吻長と訪花植物の花筒長との関係について調査を行った。また、ガ類の花蜜への依存度を明らかにするために、花以外の蜜源におけるガ類相も調査した。2017年および2018年の4月から10月にかけて、兵庫県南部11地点で調査を行った。日没後から2時間において、花および他の蜜源(人工樹液、甘露、果実など)を訪れるガ類を採集し、口吻長を測定した。また、植物種ごとに花筒長を測定した。本調査と文献により、花のみから採集された種を花スペシャリストとし、花およびその他の蜜源でも採集された種をジェネラリストとした。結果、26科34種の植物の花から計14科248種996個体のガ類が採集された。また、他の蜜源からは14科191種714個体のガ類が採集された。花から採集されたガ類のうち、161種437個体は花スペシャリスト、87種559個体がジェネラリストであった。花筒が長い植物種には長い口吻をもつガ類が訪れる傾向があった。つまり、長い口吻をもつガ類は深い蜜源植物を好んで訪花していた。また、花筒が長い植物を訪れるガ類には、花スペシャリストの割合が高いことが明らかになった。これは、花蜜への依存度と深い蜜源植物への選好とには強い関係があることを示唆している。