| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-311 (Poster presentation)
植物体の表面を覆うクチクラワックスは、難揮発性物質を多く含むが、種によってその組成が様々であることが知られている。このような組成の違いは植食性昆虫の寄主認識において重要な手がかりとなり得るが、植食性昆虫の寄主認識、とりわけ摂食行動時における寄主認識とクチクラワックスの関係についての知見は未だ少ない。そこで本研究では、ウリ科植物のスペシャリストであるウリハムシ(ハムシ科)が、寄主の葉表面のクチクラワックスを摂食行動時の寄主認識に利用しているかどうかを、クチクラワックスの成分分析と、ワックス成分を塗布したろ紙を用いた行動実験によって検討した。
成分分析の結果、実験に用いた寄主植物キュウリ、カボチャ、ズッキーニのクチクラワックスの主成分は9つの長鎖のノルマルアルカンであり組成比が非常に似ていること、寄主植物と非寄主植物では組成が異なることが示された。また、行動実験から、ウリハムシはクチクラワックス成分の有無や組成によって摂食の有無や強度を変えることが示された。興味深いことに、寄主植物のクチクラワックスを模したノルマルアルカン9成分の混合物は、他の成分も含む寄主植物のクチクラワックスの抽出物より強くウリハムシの摂食行動を引き起こした。
本研究から、ウリハムシはクチクラワックスの組成の違いを摂食行動時の寄主認識の手がかりの一つとして利用していることが示された。また、ウリハムシの寄主認識においては、自然界に広く存在し植物のクチクラワックスに普遍的に含まれる長鎖のノルマルアルカンが重要な役割を果たしていることが示唆された。