| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-312  (Poster presentation)

ブナの植物間コミュニケーション
Plant communication in Fagus crenata

*萩原幹花(龍谷大学・院・農), 塩尻かおり(龍谷大学・院・農), 石原正恵(京都大・フィールド研), 日浦勉(北大・フィールド研)
*Tomika HAGIWARA(Ryukoku Univ.), Kaori Shiojiri(Ryukoku Univ.), Masae Ishihara(Kyouto Univ.), Tsutomu Hiura(Hokkaidou Univ.)

植物は昆虫などから被害を受けると匂いを放出する。これは、匂いを介した「植物間コミュニケーション」と呼び、近年注目されている。
匂いを介した植物間コミュニケーションの実証の殆どは草本で、木本ではヤナギ他4種程度しか実証されていない。もし樹木、特に森林を優占するような種でおきているのであれば、森林生態系における生物群集構造を解き明かす、新たな視点になり得る。また、樹木が優占するための生存戦略の一つではないか、と考えられる。
ブナは冷温帯林の優占種であると同時に、様々な生存戦略についてこれまで報告されてきた。昆虫の食害に対し、食害を受けた後に縮合タンニンや総フェノールなどの「防御物質」を増やし、その後の食害を防御することも報告されている。そこで本研究では、ブナにおける匂いを介した植物間コミュニケーションを検証した。
5月に各調査地のブナ1個体を、食害を擬して全体の約20%の葉を半分に人工摘葉し、その個体から距離ごとにナンバリングした枝の葉の被害度を90日後に調査した。その結果、各サイトで同産地のブナ同士の場合、摘葉個体からの距離が離れる程、葉の被害度が増加した。また異産地の個体を人工摘葉した場合も、同じように距離が離れる程被害度が増加した。このことから、ブナにおいても、匂いを介した植物間コミュニケーションがおきていることが示唆された。また、コミュニケーションは同産地、異産地間にかかわらずおきることが示された。発表では個体内の誘導反応や揮発性化学物質ついても報告し、ブナの植物間コミュニケーションについて考察する。


日本生態学会