| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-313 (Poster presentation)
北海道にはヒグマ(Ursus arctos)が生息しており、ヒグマは秋にヤマブドウ(Vitis coignetiae)等の液果を多く利用していることから(Sato 2005)、植物種にとって重要な長距離散布者であることが考えられるが、ヒグマの長距離散布者としての重要性はよくわかっていない。そこで本研究では、ヒグマが植物の空間遺伝構造におよぼす影響を調べるために、ヒグマの生息していない利尻島と奥尻島、ヒグマの生息している浦幌町において、ヤマブドウの空間遺伝構造、個体間距離、遺伝的多様性を比較した。
利尻島、奥尻島、浦幌町においてそれぞれ489個体、174個体、184個体のヤマブドウについてマイクロサテライト遺伝子座(5遺伝子座)、採取位置のGPS座標を調べた。
空間遺伝構造の解析において浦幌町でのみ離れた距離クラスで正の近交係数が見られた。このことは、ヒグマによる長距離散布の影響を示唆した。全距離クラスでのSp値はヒグマの生息している浦幌町で高く、ヒグマの生息していない利尻島、奥尻島で低くなっていた。奥尻島と浦幌町では近傍個体から離れている個体が幾分多かったのに対し、利尻島では近傍個体は近くに生育しており、調査地間ではヤマブドウの定着サイトの分布が異なることを示唆した。これらのことから、Sp値の違いは種子散布者と定着サイトの分布様式が影響していると考えられた。