| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-317  (Poster presentation)

餌植物の個体群密度で決まる二ホンジカの嗜好性
Sika deer's preference depends on the population density of food plant

*大崎晴菜(弘前大学), 千本木洋介(南会津町役場), 坂本祥乃(野生動物保護(株)), 宮本留衣(テンドリル(株)), 田島美和(自然公園財団), 奥田圭(広島修道大学), 山尾僚(弘前大学)
*Haruna Ohsaki(Hirosaki Univ.), Yosuke Senbongi(Minamiaizu town hall), Yoshino Sakamoto(Wildlife Mgmt. Office Inc.), Rui Miyamoto(Tendril Inc.), Miwa Tajima(Natural Parks Foundation), Kei Okuda(Hiroshima Shudo Univ.), Akira Yamawo(Hirosaki Univ.)

 植物は常に周囲に生育する植物と資源を巡る競争に曝されている。このような植物同士の相互作用は、葉の化学的・物理的形質を変化させるため、植物を利用する植食者の資源利用にも影響を及ぼすことが予想される。我々は、これまでにエゾノギシギシとハムシ類を対象とした研究により、植物の種内競争が、葉形質の可塑的な変異を介して植食性昆虫の分布を規定していることを報告した。このような植物間相互作用による葉形質の変異は、ハムシ類などの節足動物だけでなく、より大型の草食哺乳類の餌資源の利用にまで影響している可能性がある。本研究は、ニホンジカとニホンジカの不嗜好性植物として知られるシロヨメナを対象に、餌植物の生育密度の違いに伴う葉形質の変異が草食性哺乳類の資源利用に与える影響について検証をおこなった。野外に自生する生育密度が異なるシロヨメナ個体について、葉の化学分析とニホンジカに対するバイオアッセイ実験を実施した。その結果、同じシロヨメナ個体群内であっても同種他個体と集団で生育するシロヨメナ個体は、単独、または他種と生育するシロヨメナ個体よりも葉の総フェノール濃度およびC/N比が高く、単独個体よりも防御レベルの高い葉を生産していることが示唆された。さらに、バイオアッセイ実験の結果、単独で生育していたシロヨメナ個体は100%の確率でニホンジカに食べられたが、集団で生育するシロヨメナ個体は50%の確率で食べ残され、嗜好性に明らかな違いが見られた。以上の結果は、ニホンジカのシロヨメナに対する嗜好性はシロヨメナの生育密度によって決まっていること、植物間の相互作用による葉形質の変化が、節足動物のみならず草食性哺乳類の餌資源の利用にまで影響していることを強く示唆している。


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