| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-322 (Poster presentation)
日本固有種のササユリ Lilium japonicum は、里山環境減少によりその自生個体数が激減し、保全が求められている。その花粉媒介には夜行性スズメガ類の寄与が示唆されてきた。我々のグループも先行研究において、その花香放出量が日没頃から深夜にかけて増加することと、複数種のスズメガによる夜間のササユリ訪花を確認している。これらは、ササユリ花香が夜行性ガ類の訪花を促すことを示唆する。この仮説検証の為、花香の構成成分組成を人工的に再現した花香調香品を用い、粘着トラップ法によって夜間花香に定位する昆虫種の捕獲調査を行った。調査は、奈良県桜井市の大神神社の境内および京都工芸繊維大学嵯峨キャンパスの圃場で実施した。花香調香品は、原体100µLを直径1.5cmのゴムキャップに含侵させて粘着板トラップ中央に配置した。2018年6~7・10月に花香調香品処理区と無処理区各50個を設置し、17時から翌10時までに捕獲された生物種を確認、各個体数を計測した。同年10~11月には花香の量的主成分:リナロールオキサイド(ピラノイド)とリナロールを、単独または花香中の成分比7:3で配合調整した混液を用い、同様の調査を行った(N=14)。その結果、鱗翅目類(主にガ類)、甲虫目類(コガネムシ)、ハエ目類(ハエ・アブ・ガガンボ)が捕獲され、特に調香品処理区で鱗翅目の捕獲数が有意に多かった。その種数は28に及び、クロテンカバアツバAnachrostis nigripunctalis が最も数多く捕獲された。二成分の単独処理区での捕獲種の構成は、香料無処理区と大差なかったが、二成分混合処理区ではガ類の捕獲数が有意に増加した。これらは、検証仮説を支持する結果と言える。