| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-325 (Poster presentation)
近年、ニホンジカ(以下、シカ)の個体数増加に伴い、シカの食害のため、森林の公益機能低下が危惧されている。また、カメラトラップ法の普及に伴い、野生動物の観察方法の幅が広がった。また、カメラトラップ法によるシカの利用頻度の把握と研究対象地の植生を把握することにより、植生の違いがシカの季節的な利用頻度に与える影響の解明を目的とした。
そこで本研究では、宝ヶ池丘陵に250 m メッシュに1台、計18台のトレイルカメラ(以下、カメラ)を2017年3月から2018年3月まで設置し、画像データを得た。そして、正常に可動したカメラ12台より、撮影頻度指数(RAI)を月別に算出した。また、カメラの撮影範囲にあたる一辺20 m で18の方形区を作成し、その中の樹木の樹種名、幹本数(立木数と萌芽数)、全幹の胸高直径をそれぞれ測定した。
18の植生プロットを胸高断面積割合によりクラスター分析した結果、各群の平均胸高断面積割合から、「アベマキ・コナラ群」、「ソヨゴ・リョウブ群」の2つに分類することができた。胸高断面積割合のデータおよび季節別のRAIを用いて正準対応分析(CCA)を実施し,植生の違いと季節別RAIの関係を把握した。「ソヨゴ・リョウブ群」は春から夏にかけてのRAIが高い傾向が見られた。一方,「アベマキ・コナラ群」は,夏から秋にかけてのRAIが高い傾向が見られ、リョウブの新葉などを食べに来ていると考えられた。
晩春に新葉を晩夏には堅果類を食べに来ていたことがと示唆された。以上のことから、植生の違いによって,シカが目的とするエサ資源が異なり,それによって来訪する季節パターンが異なることが判明した。