| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-329  (Poster presentation)

東北地方のヤマトアザミテントウにみられる寄主植物への非対称な局所適応
Asymmetric local adaptation of a thistle-feeding ladybird beetle

*中曽根大輝(山形大学), 松林圭(九州大学), 藤山直之(山形大学)
*Daiki NAKASONE(Yamagata Univ.), Kei W Matsubayashi(Kyushu Univ.), Naoyuki Fujiyama(Yamagata Univ.)

植食性昆虫の地理的集団が異なる寄主を利用している場合、寄主利用能力に関する局所適応が生じることがある。一方、植食性昆虫では、地理的距離とはやや独立に、異なる寄主の利用に伴って強い生息場所隔離が発達する例が報告されている。よって、寄主利用能力に関する局所適応は、異所的条件下で潜在的に生息場所隔離が発達するプロセスであると捉えることができる。
ヤマトアザミテントウ(以下、ヤマト)では、寄主とするアザミの種が地理的集団間で異なる場合がある。さらに、アザミには種内にも様々な地理的変異が存在することがしられている。本研究では、ヤマトのうち主にミネアザミ(以下、ミネ)を寄主とする弘前集団(青森県)、主にナンブアザミ(以下、ナンブ)を寄主とする八幡平集団(岩手県)と東根集団(山形県)、および、それらの集団が生息地で実際に利用しているミネとナンブの葉を用いて、ヤマトの各集団に異種および同種のアザミを利用する能力に関する局所適応が生じているのかを、成虫の食性および幼虫の成育状況に注目して実験条件下で検討した。
3集団の成虫はナンブの産地に関わらずナンブをミネよりも多く摂食した。幼虫の成育に関しては、3集団全てがナンブの産地に関わらずナンブ上で高い羽化率、短い成育日数、重い蛹重を示した。一方、ミネ上では、弘前集団の成育状況は良好であったのに対し、八幡平集団と東根集団では多くの個体が羽化前に死亡した。以上の結果より、寄主利用能力に関する明瞭な局所適応は弘前集団でのみ生じていること、さらに、弘前集団の成虫はナンブを多く摂食したとともに幼虫のナンブ上での成育状況も良好であったことから、ナンブはヤマトにとって潜在的に利用しやすい寄主であると考えられた。
得られた一連の結果を、異所的条件下での生息場所隔離の発達と生殖隔離の成立という観点から考察する。


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