| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-333 (Poster presentation)
多様な種子散布方法のうち、動物散布では鳥類が重要な役割を果たしている。鳥類による被食型散布は、鳥によって果肉に含まれる発芽抑制物質が除去されるため、種子の発芽が促進されるが、不明な樹種も存在する。また、近年各地で鳥の減少が相次いで報告されている。種子散布者である鳥が減少すると、種子散布が行われなくなるだけでなく、発芽に失敗する種子が増えることで、植物の更新動態を大きく左右する可能性がある。そのため、鳥類の個体数変動の原因を明らかにし、生態系への影響が考えられる場合は対策を講じる必要がある。
そこで本研究では、名古屋大学東山キャンパスを調査地とし、1978年~2018年における47種の果実食鳥類群集の個体数や種組成の解析から、年変動の法則性を捉え、関連要因との解析から果実食鳥類群集に影響を及ぼす要因の検討を目的とした。また、同調査地に生育する17樹種を対象に、果肉の有無で発芽実験を行い、被食が発芽率に与える影響を確かめた。
41年間で102種121494羽の鳥が記録され、調査地が鳥の貴重な生息地であることが判明した。そのうち主な19種の果実食鳥類において、動的線形モデルによる個体数解析を行った結果、コゲラ、メジロなど5種では増加傾向、キジバト、スズメなど9種では減少傾向が認められた。この個体数変動傾向について、年平均気温や年降水量などの気象データに加えて、周辺の緑被率といった環境要因との関連性を解析し考察する。また、果実食鳥類における多様度指数はほぼ横ばいであった一方、NMDSによる種組成解析からは果実食鳥の種組成が徐々に変化していることが明らかになった。
発芽実験では、エゾノコリンゴを除いた全ての対象樹種において、果肉を除去した種子の発芽率が果肉付きの種子の発芽率より有意に高くなったことから、鳥の被食によって果肉が除去されると発芽が促進される効果が示された。