| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-334 (Poster presentation)
固着生活を送る植物は様々な媒体を種子散布に利用している.食肉目であるホンドタヌキもその一種であり,種子散布者として重要であると考えられている.
本研究では玉川大学北東部を調査地として,ホンドタヌキの食性,種子散布の距離に加え,タメフン場を利用する動物を調査することで玉川大学内に生息するホンドタヌキは種子散布者としての役割を果たしているか研究することを目的とした.
方法としては玉川大学内にあるタメフン場を把握し,週に一回フンの採集を行い,水洗後,食性の評価に用いた.食性の評価はポイント枠法によって行った.種子については,可能な限り同定を行い,個数を記録した.種子散布の距離の推定にはベイトマーキング法を用いた.タメフン場を利用する動物についてはセンサーカメラを用いて調査した.
その結果,市街地が周囲にありコナラなどの二次林や,スギ,ヒノキなどの人工林などが混在し,農場や水田のある玉川大学の北東部に生息するホンドタヌキは人為的食物への依存度は低く,昆虫類や果実(果皮・種子),その他の植物質などを主体とした食性であると結論づけられた.また,種子は不明種も含め34種と多かったこと,種子散布距離は季節によって変化し,特に果実を多く利用する秋にはほかの季節に比べて長くなったことから種子散布者としての役割を果たしているといえる.タメフン場ではハシボソガラスやムクドリ,ネズミ類などが撮影されたことからタメフン場はホンドタヌキの情報交換の場だけでなく,鳥類やネズミ類にとっては採餌場所として利用されていると考えられる.また,玉川大学内で今まで撮影されていなかったニホンアナグマもタメフン場において撮影された.今後ニホンアナグマが定着することも考えられ,新たな種子散布者となりうる.そのため,今後の動向を調査するのに加え玉川大学に現存している緑地を適切に保全していくことが必要となってくると推察される.