| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-336  (Poster presentation)

市民科学データからみる東京の蝶と植物の関係
Biological relationship between butterflies and plants in citizen science data of Tokyo

*海老原健吾(中央大学), 安川雅紀(東京大学), 喜連川優(東京大学, 国立情報学研究所), 鷲谷いづみ(中央大学)
*Kengo Ebihara(Chuo Univ.), Masaki Yasukawa(The University of Tokyo), Masaru Kitsuregawa(The University of Tokyo, NII), Izumi Washitani(Chuo Univ.)

 「市民参加の生き物モニタリング調査(略称:いきモニ)」は、環境意識の高い組合員を多く擁する生活協同組合「パルシステム東京」、保全生態学(中大)および情報工学(東大)の研究室の三者の協働で進められており、チョウの同定に自信の無い初心者でも写真を添付してインターネットを介して報告すれば、専門家の同定によってデータがデータベースに投入される。調査者が送信する写真にはチョウの個体だけではなく吸蜜植物なども写っている。本研究では2015~2017年にデータベースに投入された写真データ(11,956件)を用いて、チョウと植物の共生的相互作用のネットワークを分析した。
 画像からチョウが訪れている植物種を同定し、在来種、外来種、園芸種の植物タイプに分類し、チョウが利用する植物群の類似性からギルドを認識するため階層型クラスター分析および共生的相互作用のネットワーク分析を行った。
 チョウとの共生的相互作用が観察された植物種は、観察件数、観察種数のいずれにおいても園芸種よりも在来種が多く、特にアザミ類への訪花が最も多かった。クラスター分析によりチョウの種を6つのグループに分けることが出来た。チョウと植物の種別組み合わせごとに、チョウによる訪花割合を反映させ、共生的相互作用ネットワークを作図したところ、4グループは特定の植物利用のギルドであり、2つはジェネラリスト的な植物利用のグループであった。その結果はこれまでの知見を裏付けるものであった。
 本研究で用いた手法は個別のチョウと植物の関係だけでなく、特定の地域におけるチョウと植物の共生的相互作用の全体像を把握する上でも有効であるといえる。チョウ類の共生的相互作用の分析においても市民科学データが有効であることが確認できた。


日本生態学会