| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-340  (Poster presentation)

「移動モデル」による潮間帯生物群集の動態の定量化:生態学的弾性の解釈
Quantifying intertidal sessile community dynamics with movement models: implications for ecological resilience

*石田拳(北大・院・環境), 奥田武弘(水産機構国際水研), 金森由妃(中央水研), 立花道草(北大・院・環境), 藤井玲於奈(北大・院・環境), 岩渕邦喬(北大・院・環境), 小林由佳理(北大・院・環境), 竹中映美(北大・院・環境), 彭燁帆(北大・院・環境), 野田隆史(北大)
*Ken ISHIDA(GSES,Hokkaido Univ.), Takehiro OKUDA(NRIFSF, FRA), Yuki KANAMORI(NRIFS, FRA), Michikusa TACHIBANA(GSES,Hokkaido Univ.), Reona FUJII(GSES,Hokkaido Univ.), Kunitaka IWABUCHI(GSES,Hokkaido Univ.), Yukari KOBAYASHI(GSES,Hokkaido Univ.), Emi TAKENAKA(GSES,Hokkaido Univ.), Youhan HOU(GSES,Hokkaido Univ.), Takashi NODA(Hokkaido Univ.)

生態学的弾性は環境変動に対する生態系の応答様式を反映するため、その定量は生態系の理解と管理に重要な意味を持つ。最近、野外群集の生態学的弾性の定量法がBagchiら(2017)により考案された。この方法では種組成の時間変化の「軌道」を解析することで、群集の生態学的弾性を「線型動態」、「可逆的動態」、「安定的動態」、および「非線型動態」の4タイプに類別する。この方法は陸上植物群集を除き適用例はなく、また、生態学的弾性のタイプ間で群集動態の他の安定性尺度が異なるかもこれまで評価されたことはない。そこで本研究では、岩礁潮間帯の固着生物群集を対象に、太平洋沿岸の親潮海域の3地域(北海道東部、北海道南部、三陸)から得られた67例の15年間の群集の時系列データにBagchiら(2017)の方法を適用し、地域間で群集の生態学的弾性のタイプが異なるか?生態学的弾性のタイプと地域の違いにより、群集動態の他の安定性尺度(種数と種組成の年変動性)がどのように異なるかを検討した。その結果、いずれの地域でも、最も多かった生態学的弾性のタイプは「安定的動態」で、これに「線型動態」が続いた。「安定的動態」に分類された群集の割合は、南の地域ほど最も高かった。種数の年変動性と種組成の年変動性は、いずれも三陸が他地域より大きかったが、「安定的動態」と「線型動態」に類別された群集間では明瞭な違いはなかった。以上から、太平洋沿岸の親潮海域では岩礁潮間帯の固着生物群集の生態学的弾性のタイプは「安定的動態」が優占的であり、その割合も南ほど高くなることが明らかになった。また、群集の時間変動性も地域変異したものの、生態学的弾性のタイプと群集の時間変動性の関連は見いだせなかった。このような群集動態の地理変異のパターンがどの程度普遍的であるかどうかを明らかにするためには、今後は対象地域と生物群を拡大して研究を行う必要がある。


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