| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-341 (Poster presentation)
コウモリは種ごとにハビタットの空間構造に対する選好性を持つことが知られており、開放空間利用種・林縁利用種・林内利用種の3つに大別することができる.そのため人工林景観においては林内だけでなく森林施業の過程の一つである皆伐地を好んで利用する種が存在すると考えられる.本研究では音声を用いてコウモリの活動量を皆伐地と人工林内で比較し、皆伐地についてコウモリのハビタットとしての検討を行った。
調査は栃木県矢板市および塩谷町の人工林景観において林内23地点・皆伐地7地点で行われた。2017年6月から9月と2018年6月から8月にかけてバットディテクター(D500X, Pettersson)を用いて録音による音声調査を行った。本研究ではコウモリの音声を音声解析ソフト(BatSound4.4, Pettersson)を用いて可視化し、Rhinolophus属・Nyctalus属&Vespertilio属・Miniopterus属&Pipistrellus属&Plecotus属・Murina属&Myotis属の4つの種群への目視での分類を行った。それぞれの種群の録音ファイル数を活動量と定義し、皆伐地と人工林内の比較を行った。また、コウモリは採餌の際に特有の音声(バズ音)を出すことが知られている。そこでバズ音の数および活動量に占めるバズ音の割合を皆伐地と人工林内で比較した。
調査の結果、林内と皆伐のどちらでも4種群が確認され、なかでもNyctalus属&Vespertilio属の種群がほかの種群と比較し顕著に活動量が多かった。4つの種群のうちRhinolophus属を除いた3種群が皆伐地において活動量が大きい傾向があった。バズ音の結果でも皆伐地においてバズ音の数が大きく、活動量に占めるバズ音の割合も皆伐地において高かった。
本研究の結果からコウモリの中には皆伐地をより多く利用する種がいること、皆伐地は採餌場所として利用されていることが示唆された。