| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-342 (Poster presentation)
都市河川の河川敷は人間活動による影響を受けている。例えば、グラウンドや芝生などの市民のレクリエーション施設としての利用や堤防の定期点検に伴う草刈りである。これら人為攪乱は人間の用途や労力によって攪乱頻度やタイミングにムラがあり、その差異によって複数の景観構成要素を生じさせる。チョウ類を環境指標生物として用い、都市河川における河川敷の景観構成要素と生物群集との関係を明らかにすることで、生物多様性に配慮した河川管理に必要な知見を得ることを目的とする。
典型的な都市河川である東京都多摩川中流域の河川敷を調査地とし、草原、林縁、礫河原、公園の4つの景観構成要素で調査区間を区分した。チョウ類群集は2017年6月から2018年11月までの期間でトランセクト法による調査を行った。チョウ類群集のデータをもとにクラスター分析を行うと、調査区間は景観構成要素ごとにグループ分けされた。礫河原と公園はチョウ類の生息密度が少なくクラスター分析以外の分析方法を用いたほうがよい。林縁と草原に関しては、林縁、草原、その移行帯の3グループに分類できることが、チョウ類の種特性を反映した分析手法である環境階級存在比(ER)から示唆された。高茎草本の草原と小規模な樹林地の林縁は、都市河川の河川敷において草原から林縁への移行帯としてチョウ類に利用されている可能性がある。草丈の違いがチョウ類群集へ直接影響しているか調べるために、草丈とチョウ類の生息密度との関係を分析した。春季(4~6月)、夏季(7~8月)では有意な傾向はみられなかったが、秋季(9,11月)では10cm未満の草丈で生息密度が下がる傾向がうかがえた。秋季の草刈りがチョウ類の多様性を損なわせる可能性がある。逆に人為攪乱のタイミングを工夫することで、生物群集の多様性を維持しつつ河川管理を行うことができる可能性が高い。