| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-343  (Poster presentation)

脊椎動物による有蹄類死体のスカベンジングとその役割:捕食者不在の地域の事例
Vertebrate scavenging and its function on ungulate carcasses: a case study in predator absent ecosystem

*稲垣亜希乃(東京農工大学), 丸山哲也(栃木県自然環境課), 山﨑晃司(東京農業大学), 栃木香帆子(東京農工大学), 小池伸介(東京農工大学)
*Akino INAGAKI(TUAT), Tetsuya Maruyama(Tochigi Pref.), Koji Yamazaki(TUA), Kahoko Tochigi(TUAT), Shinsuke Koike(TUAT)

脊椎スカベンジャー群集は生態系からの動物死体の除去において重要な生態的機能を果たす。特に、有蹄類のような大型動物死体はスカベンジャーにとっては大きな資源であり、スカベンジャー群集とその生態系機能に大きな影響を与える。しかしながら、大型動物死体のスカベンジングは多くの地域で見過ごされており、特に大型動物の捕食者が存在しない地域の事例はまだない。本研究では、有蹄類の捕食者が存在しない特有の生態系を有する日本の森林生態系において、ニホンジカ死体における脊椎スカベンジャー群集を明らかにするとともに、スカベンジャー各種の死体利用形態や死体消失における役割を評価した。調査は、栃木県日光市の森林内にて、夏から秋にかけて自動撮影カメラを用いて、死亡直後のニホンジカ55死体の消失過程を記録した。その結果、ツキノワグマ、イノシシ、タヌキ、キツネ、テンを中心とした中・大型哺乳類による死体利用が確認され、鳥類(クマタカ、トビ、カラス)の死体利用は哺乳類と比較して多くなかった。これは、林冠が閉じているため、鳥類による死体検出が難しかったと考えられる。また、哺乳類および鳥類スカベンジャーの死体検出までの時間には気温が大きく関わっており、気温に伴う無脊椎動物や細菌類による分解を通した匂い情報の重要性が示唆された。さらに、死体の消失までの時間には哺乳類の採食時間および気温が顕著に影響し、哺乳類による採食の頻度が高く、気温が高いほど、死体は早くに消失した。


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