| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-345 (Poster presentation)
近年、急激な都市化や土地利用形態の変化により、二次的自然に生息する鳥類群集への影響が懸念されている。特に地方都市近郊の中山間地域には自然性の高い二次的自然が減少、変化してきており、鳥類群集に関する保全生態学研究の進展が期待されるが、既存の研究は少ない。当研究室では、比較的自然性の豊かな長野県上伊那地方の水田地域で鳥類群集の既往研究(津森・大窪2003)が16年前に実施されたが、予備調査の段階で土地利用の変化による群集への影響が懸念された。そこで本研究では16年後の鳥類群集と土地利用の変化を明らかにし、さらにこれらの保全策を検討することを目的とした。
調査地の立地環境条件は中山間地と市街地、また、各々に基盤整備の有無を設けた。鳥類群集調査は2018年6月~10月上旬に5調査地で9日(毎回往復:18回)ずつ行った。津森・大窪(2003)では2002年5月~9月下旬に同調査地で13日(26回)ずつ実施したため、両年の調査回数を同数に換算して比較した。土地利用調査は土地利用を6区分(水田、畑地、草地、住宅、樹林、その他)に分類し、踏査調査で地図に記録後、PC上で各面積を算出した。
各鳥類種の出現個体数を用いたTWINSPAN解析の結果、全調査地は中山間地と市街地に分類され、これは16年前(津森・大窪2003)と同様だった。また、種群分類では第2分割までで4種群に分かれ、Ⅰ群は中山間地型(森林性・草地性)、Ⅱ群は共通種(スズメ、ツバメ等)、Ⅲ群は住宅繁殖・農耕地採餌型(モズ、キジバト)、Ⅳ群は市街地型(住宅性、水辺性等)だった。種群の主な構成種の生息環境特性は16年前(津森・大窪2003)と比較的共通していた。しかしながら、各調査地で特定の種の個体数や優占度の変動があった。特に特定外来のガビチョウが確認され、また猛禽類など希少種が減少し、土地利用の変化による鳥類群集への影響が考えられた。