| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-346 (Poster presentation)
化学物質等の人為的攪乱要因を対象とした生態系管理において、「許容される影響(レベル)」をどのように決めるのかが、難題の1つといって過言ではない。
日本国内の多くの休廃止鉱山では、鉱害防止を目的とした排水処理等の対策が実施されている。しかし、中和等の処理を行なった鉱山廃水(以下、坑廃水処理水と呼ぶ)が流入する河川においても、自然由来の影響もあるため比較的高い河川中金属濃度がしばしば検出されている。そのため、河川生態系に対する影響の評価とその影響をどの程度まで低減・許容するかが課題となっている。本ポスター発表では、坑廃水処理水流入河川とその近傍の対照河川における野外生物調査結果を、どちらの河川に処理水が流入しているかを伏せて報告する。当日は、どちらが処理水流入河川かを考えていただきつつ、許容可能な影響(レベル)について議論したい。
本研究では、北海道北部に位置する坑廃水処理水流入河川(4地点)および隣接する対照河川(4地点)において、2018年6月末に各種金属濃度等の水質調査、ならびに魚類及び底生動物を対象とした河川生物調査を実施した。水質は、亜鉛等の金属濃度に加えて、pH、溶存酸素,電気伝導度等を測定した。魚類は、各地点において5m×10mの調査範囲を5箇所設定し、エレクトロフィッシャー及び投網等で採捕した。採捕した個体は、現地で同定し、体長、体重を計測した。底生動物は、早瀬の各地点5個の礫からそれぞれ採取し、実験室にて同定後、個体数及び種数を計測した。処理水流入河川における亜鉛、銅、カドミウム、鉛の濃度は対照河川に比べて約2〜250倍ほど高く、 特に坑廃水処理水流入地点に近い上流部で複数の金属が米国の水質クライテリア値も超過していた。これらの結果は坑廃水処理水流入河川において金属による生態リスクが懸念されることを意味する。魚類及び底生動物調査結果についてはポスターにて紹介する。